AI活用コラム

ベテランの頭の中を、会社のAI資産へ変える。ナレッジのテキスト化

「いつも、何となく判断している」をどう残すか。見積前の確認を例に、ベテランへの聞き方、AIでの整理、原本確認と更新までを考えます。

まず、結論から

ベテランの経験をAI活用につなげるには?

経験を丸ごとAIに任せるのではなく、判断基準、例外、言い回し、手順を聞き取り、テキストとして残します。AIはその知識を整理・参照し、人は更新と最終判断を担います。

「それは、いつもと違う」が分かる人

同じ注文書を見ても、ベテランは一か所で手を止める。「この条件なら、先に確認した方がいい」。経験の浅い人には、その違いが分かりません。会社の強みは、完成したマニュアルより、こうした判断の途中に隠れていることがあります。

AIに会社のことを分かってもらうには、資料を大量に集めるだけでは足りません。なぜ止まったのか、何を確認したのか、どこから先は自分で決めないのか。その理由を言葉にして、人にもAIにも渡せる形にしていきます。

「全部教えてください」では、話が広がりすぎる

最初からベテランの全業務を聞き取ろうとすると、話す側も整理できません。JIKABI AIが勧めるのは、最近の一件や、繰り返し質問される一つの仕事から始めることです。業務候補を探すための大規模なヒアリングではなく、選んだ小さな業務の判断を確かめる時間にします。

例えば、見積前の確認を題材に「最近、いつものやり方を変えたのはどんなときですか」と聞きます。実際の資料を使う場合は、利用目的と閲覧範囲を決め、顧客情報を必要な範囲に絞ります。録音や外部AIへの入力も、本人と会社のルールを確認してからです。

判断を残すための、四つの聞き方

以下は架空の見積業務を使った聞き取り例です。「急ぎの依頼では、納期を約束する前に在庫と製作枠を確認する」という話が出たとします。この一文だけでも役立ちますが、さらに条件と確認先まで残すと、次の人が使えます。

聞き取った言葉を、仕事の形にする

質問は専門用語より、実際の迷いに寄せます。「どんな場合でも同じですか」と聞くと、手順の例外が見つかることがあります。

  • 何を見て判断したか:注文数量、希望日、在庫など、手がかりを確認する。
  • いつもと違う条件は何か:急ぎ、特注、初回取引など、判断が変わる境目を残す。
  • 誰に確かめるか:担当者名だけでなく、部署や役割も記録する。
  • 何を約束してはいけないか:未確認の納期・価格など、人の承認が必要な事項を明確にする。

AIには、聞いていないルールを足させない

聞き取りメモは、AIで「通常の手順」「例外」「確認先」「未確認事項」に整理できます。ただし、読みやすくする過程で、話していない条件まで補われることがあります。AIに渡す際は、発言にない内容を推測で決めないこと、出典のメモに戻れることを条件にします。

整理後はベテラン本人に、特に例外と禁止事項を確認してもらいます。「普通はこうする」と「会社として必ずそうする」は違います。個人の工夫を全社ルールに変えるかどうかは、業務責任者が判断します。

新人の質問で、使える知識かを試す

一枚の手順ができたら、別の人に読んでもらいます。「在庫はあるが製作枠は不明なら、何と答える?」「特注なのに標準価格を求められたら?」と質問し、必要な確認先までたどれるかを見ます。これは、AIに質問させる前にも有効です。

人が迷う説明は、AIも誤って使う可能性があります。答えが資料にないときは、勝手に結論を出さず、追加確認へ回せることを確かめます。ベテランが頭の中で補っていた前提が、ここで見つかります。

残すのは、完成版だけではない

知識には、元の資料、確認した人、適用する業務、更新する担当を添えます。古い条件が残っていると、丁寧に整えた文書ほど誤った判断を広げかねません。ルールを変えたときに、どこを直すかが分かる状態にします。

最初は、よく聞かれる質問を一つだけでも構いません。「あの人に聞かないと分からない」を、少しずつ減らす。その積み重ねが、AIのためだけではない、会社の引き継ぎの土台になります。

情報は最終更新時点の内容です。サービスの仕様・料金・利用条件は公式情報をご確認ください。

関連記事

次に、こちらも読む。

AI活用を自社で進めるための、関連する考え方です。